社内捜査は秘密と恋の二人三脚

調査の仲間

「新しくこちらに関連会社から応援で入りました鈴木賢人です。よ、よろしくおねがいします」

 翌朝の会計部の朝礼。

 ヨレヨレのスーツを着て、ボサボサの頭。黒縁眼鏡をかけて、ちょっと猫背。なぞの風体で挨拶をするのは、昨日の夜とは別人の鈴木さん。

「彼はこうみえて、会計士の資格を持っている凄腕です。皆さん仲良くして助けてもらいましょう」

 部長のよくわからない挨拶に、会計部員は皆パチパチと拍手。畑中専務は隣のガラスの壁越しに彼を見ていた。私は横の机に座って、パソコンに目を戻した。

「部長が手配した人らしいが、どこの人間だ?こんなおどおどした人で大丈夫なのか?」

 専務はぽつりと言う。無視も出来ないので、一応相づちをうった。

「確かにそうですね。ちょっと暗い感じの人ですけど、会計オタクの人ってそういう人いそうですよね。数学大好き、数字大好きみたいな。あ、偏見かもしれませんけど。かく言う私も数字大好き人間です。彼とは話が合うかもしれません」

「……はは。北村さんは数字も好きだけど、冗談も好きな普通のOLに見えますよ」
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