となりの色気がうっとうしい
「怯えてんじゃん。かわいいね、月雨ちゃん」
「そんなことより、早く、私が休んでいた分のノートを……」
と話をすり替えようとすると、天海くんが眉をわずかにひそめた。
「月雨ちゃーん。それが人にものを頼む態度?」
「はい?」
いやいやいや。
自分のせいで私が風邪ひいたって責任感じてノート貸せるって言ってくれたのはそっちじゃ……。
「とりあえず、腹ごしらえしよ」
「へ?!」
「朝ごはん」
天海くんはそう呟くと、玄関から出てきてそのままドアの鍵を閉めた。
あ、朝ごはん!?
私、今日は、天海くんからノートを借りたら一日中勉強する予定で……!
「ちょ、まって、天海くん!私にはこれから勉強する予定が!」
そんな私の声もおかまいなしに、彼は私の肩に手を伸ばして歩き出した。
嘘でしょ……。
しばらく歩いてやってきたのは、大通りから一本入った通り。
木の看板が目印の小さな喫茶店の前に、天海くんが立ち止まる。
お店の窓から、木のテーブルやカウンター席が見える。
どこか懐かしくて、落ち着く雰囲気の喫茶店。
天海くんが、扉に手をかけて入る。
「いらっしゃいま───あれ〜?双葉くん、今日シフト入ってた?」
「美咲さん、お疲れさまでーす。働きに来たんじゃないです」
「あ、なるほどね〜ごゆっくり〜。いらっしゃーい」
お店に入ると、カウンターにいた若い女性の方が、私に気付いてペコッと軽く会釈してくれ、私も同じようにする。
「お好きな席へどうぞ〜」
という女性の店員さんの声。
天海くんが、窓側の一番端の席へと座ったので私も向かいに座る。