となりの色気がうっとうしい
ふたりきりになり、天海くんは、卵サンドを半分分けてくれた。
断ったのだけれど、お願いだから食べてほしいとせがまれて一口食べたら、あまりの美味しさに目を見開いた。
ふわっふわのパンに、優しい甘さのたまご。
気づけばクリームソーダも飲み干してしまっていて、朝から喫茶店でゆっくりモーニングを食べるなんて生まれて初めてだったけれど、こんな休日もいいなと思った。
「ごちそうさまでした!」
食事が終わり、天海くんと席を立ち、カウンターに声をかけると、美咲さんが奥から出てくる。
レジ前で、クリームソーダの代金を払おうとした瞬間に気付いた。
私今日、天海くんからノートを借りるためだけに家から出たから何も持ってないよ……。
「ふふっ。双葉くんがさっき席立った時に支払ったくれてるよ」
なんて美咲さんに言われ、隣に立つ天海くんを見る。
「そんなっ……これ以上天海くんに仮を作るのは……」
「仮って……朝ごはん付き合ってもらったのはこっちだし。誘ったんだから当たり前でしょ。月雨ちゃんが手ぶらなのを計算してのことだし?」
と唇の端を片方だけ持ち上げる笑顔。
「怖すぎる……」
「引かないでよ」
美咲さんには「男の子は女の子の前でカッコつけたい生き物だもん!ここはおごられてあげて!」
なんて言うから、改めて「ごちそうさまでした」と天海くんにお礼を言う。
「卵サンドもクリームソーダも、本当に美味しかったです」
身体を美咲さんの方に向けてそう言うと「また来てね」と言われたけど、正直、天海くんのバイト先であるこの場所にまた来る可能性は低いと思う。
お店を先に出た天海くんを追いかけるように、お店を出ようとした時だった。
美咲さんが、ふいに身を寄せてきて耳打ちした。
「双葉くん、見かけによらず真面目よ?」
なんて。
あれのどこがどう真面目だって言うんだ……。