となりの色気がうっとうしい
「今日は、ここまででいいかな」
「……えっ」
パタン、と天海くんが教科書を閉じたので、ふと顔を上げて時計を確認すれば、時刻は午後2時を過ぎていた。
うそ、もうこんな時間!?
あまりにも夢中になってしまっていた。
気づけば、ノートには書き込んだ数字や文字が並んでいる。
「どう?天海先生の授業、ちょっとは役に立ちそう?」
テーブルに頬杖をつきながら、天海くんがニヤついた声で聞く。
「……うん、驚いた」
ノートを見つめていた視線を、隣の天海くんに向ける。
「すごい……」
「え?」
思わず漏れた私の心の声に、天海くんも少し戸惑ったように聞き返す。
「授業中、寝てるって本当なんですか?」
「え、いや、まぁ……」
はじめは、わからないところがあれば、それを茶化されるんじゃないかと疑っていたけれど。
天海くんはそんな素振りは一切見せず、親身になって私のペースで説明してくれた。
ただ答えを教えたり、解き方を淡々と説明するんじゃない。
私がどこからつまずいているのかを見極めて、丁寧に、ものすごく分かりやすく導いてくれるような教え方。
おかげで、最初は何がわからないのかすらわからなかった問題が、今では自分の力で解けるようになっている。
「……天海くん、教えるのすごく上手なんですね。見直しました」
まっすぐ見てそういえば、天海くんが一瞬目を開いて、珍しく目を逸らした。
「ま、まぁね〜」
うなじに触れながら「……なんか調子狂うわ」なんてつぶやく天海くん。
はじめて見る、なんだかぎこちない彼の姿が珍しくてじぃと見入ってしまっていると、ふたたび視線が絡む。