となりの色気がうっとうしい
そしてなぜか、天海くんがゆっくりとこちらへ少し顔を近づけてきた。
「あ、天海くん?」
「まさか月雨ちゃんにそんな真っ直ぐ褒められると思わなかったから」
「……?」
「ちょっと動揺した」
動揺って……また天海くんに似合わないセリフを……。
確かに、私が彼を褒めるなんて基本的にないけれど。
悔しいを通り越して、本心でそう認められるぐらい、 文句のつけようがないほど、完璧な教え方だったから。
「……俺、結構チョロいからさ」
「はい?」
「勘違いするよ?」
「……え?」
彼の言ってる意味を理解するより先に、ぐっと距離が縮まった。
「ちょ、ちょっと……」
「今、密室で、俺と二人きりってこと、ちゃんとわかってる?」
天海くんの目が、指先の動きが、さっきまで彼と明らかに違う。
しまった。
彼の手が伸びてきたかと思えば、その指が、するりと私の毛先に触れる。
その瞬間、すぐさま立ち上がろうと下半身に力を入れたら、ずっと正座していたせいで、足が痺れていることに気付く。
やばい。
このままだと────。
フッ、と天海くんが私の耳元で吐息混じりに笑った。
「……もしかして月雨ちゃん、痺れて立てない?」
その声に、カァッと顔が熱くなる。
どうして、私は大嫌いなこの人の前で、恥ずかしいところばかり見られてばかりなのか。
彼を褒めたことを、心から後悔する。