となりの色気がうっとうしい
「俺のおかげで、次のテストも大丈夫そうでしょ?お礼のひとつふたつもらってもいいと思うけど」
「お礼って……」
いつもの得意げな声に、ため息混じりでつぶやく。
「男が優しいときこそ警戒心持った方がいいよ?男なんて、下心の塊だから」
さっきまで真剣に私に勉強を教えてくれていた姿との落差が激しすぎて、頭が追いつかない。
「最低……」
「いや、十分ジェントルマンでしょーが。この数時間、盛んな男子高校生が女の子に指一本触れないって異常だよ?」
バカなことを言っている……こんな男が学年一位の成績なんて理解できない。
「ねぇ、月雨ちゃん。こっち向いて?無理やりは趣味じゃないんでね」
その声に、背筋がぞくりとする。
「絶対、嫌です。……ちょっとでも、天海くんのこといい人かもって思ったのがバカでした。今日は人生で一番最悪な一日!!」
うつむいたまま、ギュッと両手を握りしめてそう声を荒げると。
「……そう」
意外にも、返ってきた声は、驚くほど静かだった。
部屋の空気まで、急に重たくなったように感じる。
……あれ。
なんで。
どうして、何も言い返してこないの?
いつもなら、すぐに笑って茶化してくるのに。
考えてみれば、最初こそ強引だったとはいえ、メロンソーダも卵サンドもごちそうになって、勉強まで教えてもらった分際で、私の今の発言は、言い過ぎかも。
顔を上げられないせいで、天海くんがどんな表情をしているのかわからない。
でもいつもうるさい彼が黙ってることが、どうも気になって……。
「……ご、ごめんなさい……今のは少し、言い過ぎっ───?!」
謝りながら、顔を上げた瞬間。
唇に柔らかいものが当たった。