となりの色気がうっとうしい

「天海くんに、これ以上借りを作りたくないので。朝はごちそうしてもらったし、勉強を教えてもらったのは助かったので……」


しそのぬいぐるみだって、取ってもらったし……。


チラリと視線を彼に向ければ、ニヤッと口角を上げていた。


「優しいね、月雨ちゃん」


「別にっ」


すぐに顔を背け、痺れが和らいだ足に力を入れて立ち上がって、天海くんからもらったノートとしそのぬいぐるみを手に持つ。


「奏も部屋にいるので」


「わかってるって。変なことしない。月雨ちゃんの手料理か〜楽しみすぎるね〜」


「……」


ひとりで食べるご飯がどれだけ寂しいか、知っている。


朝、天海くんと卵サンドを分け合って、それをさらに実感してしまったから。


私たちは、天海くんのうちを出て、隣の部屋へと向かった。


「どうぞ」


「おじゃましまーす」


彼がこの玄関に入るのは2回目だけど、1回目は私の記憶がほぼないから、実質ちゃんと招くのは初めて。


間取りは天海くんのうちと同じだけど、家具のレイアウトが違うだけで雰囲気が全然違う。


自分んちを見て、天海くんのうちがすごくシンプルで物が少なかったんだと感じる。


「ここで待っててください。テレビもつけていいので」


冷蔵庫から麦茶を取り出してコップに注ぎ、ソファーの前のローテーブルに置く。


「ありがと。写真、見てもいい?」


「……ど、どうぞ。そんな面白い物じゃないですよ」


リビングの棚に並べられた写真立てに気付いた天海くんにそう答えて、私はエプロンをつけてチャーハン作りに取り掛かる。
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