となりの色気がうっとうしい
「……っ、したいことをすればいいって、恵まれた人の考え方ですよ。守るもののために、自分の欲を押し殺していたら、気が付いたら、したいことなんて思いつかなくて、やるべきことだけが目の前にあるんです」
「……」
「あっ、すみませんっ!しゃべりすぎま───っ!?」
天海くんに言われたことに、言い訳するみたいにペラペラとしゃべってしまい、慌てて謝ると。
いきなり、制服のネクタイが下から引っ張られて、私のスカートの上に頭を置いていた天海くんと顔が至近距離になる。
「な、なんですかっ」
「月雨ちゃんが、欲を押し殺すとかいうから。スイッチ入ったかも」
「えっ」
「俺にはその欲ちゃんと見せて欲しいなあと思って」
「意味がわからないんですが……」
ネクタイを引っ張る右手とは反対の、天海くんの左手が伸びて私の頬に触れる。
「月雨ちゃん、俺のこと犬かなんかだと思ってるでしょ」
え。
まさか、さっき心の中で思っていたこと、聞こえていた?
「この間忠告してあげたばっかなのに。ちゃんと、人間の雄だって意識してね」
雄って……。
人間には、理性がある。
動物とは全然違うんだから。
「教えてよ、月雨ちゃんの“欲”」
天海くんは、ニッと広角をあげると、身体を起こして私と並んで座り出した。
なんか……天海くんの口から言われると、違う意味に聞こえてしまう。違くもないのかもしれないけど。
顔だけは、大人びていて、色気付いているから。