受験日和です。

第二話。難攻不落のお勉強?

いち子は勉強はいいのよ
背だって伸びる時期でしょ? いま

まぁね。
ただ本人が

えっいち子が!?
勉強したがっているの?

トントン
「ママだけどいっちゃん居る?」

ママのノックで目が覚めた

「うん」

「パパがスイカ切っているけど」

「うん今行く」

昔オペラ歌手を目指していただけあって
ママの声はきれいだ
今は地方の旅行モデルやら謎のテレビショッピングやら

私には
ママみたいな抜群のスタイルとか
きれいな声とか
そういうものが有る訳でも無い

だめだ
私は日南子みたいに勉強が出来ない
翠みたいにスポーツが出来る訳でもない
翠の親友のサリみたく、ハーフとかでもない

ない
ない
ない地獄。

「いっちゃん今来るって」

行かなきゃ
と思いながらも
腕がシビれてしまっている

藤村先輩
いや
神様!!

私は一体どうしたら良いのでしょうか?

んー

何も無いか
やっぱり

「お部屋に持って行ってあげようか?」

「行くー」

心の神様は、出て来なかった


そういえば幼稚園生の時
ショッピングセンターで迷子になった
あの時は、不安で不安で
ものすごーく時間が長く感じた

未だに覚えている
周りの知らない大人がみんな遠く見えて
時間がゆっくりと進む
私だけ一人
世界に

気付いたら、迷子センターの係の人の所で
ぴーぴー泣いていたってお母さんが

お母さんを、困らせてしまった自分
見つけられなかった自分
お母さんを、責めてしまう自分
迷子センターの係の人が、たまたま昔のお母さんのファンとかで何か色々話していたような

未だに

そのショッピングセンターの場所
今はイ◯ンモールなのだが
思い出すと何だか胸がキュっと
苦しくなる


スイカをシャリっとかじった

「お母さん
私、迷子になったの何歳の時だったっけ」

「ええっと5歳だったかしらね。
いち子は元気が良くて、どんどん行っちゃうのよ
どうしたの?」

「いや別に
ごめんね。何か」

「いいのよ」

そう
お母さんはその時、体調が悪くて
弟が産まれるはずだった

ハスイ…

その当時は意味が分からなかった
その日から、弟の話はしちゃダメだってパパが

破水流産
赤ちゃんが、死んじゃった

弟が見ていたら
笑っちゃうんだろうな

失恋ぐらいで…か。

「いち子
本当の自分が一番大切よ
何が本当に自分にとって一番大切か
パパとか、ママでなく、
いち子が大切なのよ」


その夜⭐

懐かしい風景だった
夢なんだと思う
小さな男の子がスイカ畑にいる

何故、懐かしいかは分からない

男の子が言った

「藤村先輩はいい奴だよ
でもいち子はいち子」

⭐⭐

目が覚めた
びっくり
神様じゃなく、弟が出た!?

仮定弟の言葉を、思い出した

ええっと
藤村先輩と今結婚すると
僕は生まれて来れなくなる
だから
特にこだわらなくていい

いいー?!

ひょえー何だったんだろう今の


一階のリビングで
朝からママが、ユーミンを歌っている

「いっちゃーん今日お休みの土曜日よ
明後日は学校だけど、次の日終業式
大掃除にぞうきん居るのー!?」

「ママー1人二枚ー」

不思議な事も有ると思った

自分は自分の道? を、行く
道?

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