猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
交通事故
日曜日のショッピングモールはどこも家族連れやカップルで賑わっていて、1人で買い物をしていた田崎尚美が新作の春コートを購入したときにはすっかり日が暮れていた。

今日の目的はこのコート一着だけだったのだけれど、新生活が始まる今の時期はどこのお店もひときわに際っている。

「ふぅ……すっかり遅くなっちゃった」

買い物と人混みの中を歩いたことによる疲れで自然とため息がもれる。

1人の買い物でそんなに時間をかけるつもりがなかったので午後から出てきたのだけれど、それがそもそもの失敗だったみたいだ。

今日は夕方にはアパートへ戻ってちょっと凝った料理を作る予定だったけれど、もうそんな時間はないかもしれない。

ここからアパートまで電車で30分はかかる。
たどり着く頃には外はすっかり暗くなっているだろう。

「仕方ない。カレーでも作るか」

料理が趣味の尚美は今晩の献立を妥協してつぶやく。
カレーやシチューなら固形のルーがあるし、時短で作ることができる。

ちょうど他の人たちも帰宅時間なのだろう、駅へと向かう歩道には沢山の人が溢れていた。

これじゃ電車で座れるかどうかも怪しいなぁ。
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