猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
クラリとめまいも感じて空腹が極限状態にあるとわかると、途端に口の中に唾が広がってくる。
甘くていい香りのミルクが目の前にある。

男性に抱っこされて哺乳瓶で飲まされるというのは少しアレだけれど、でも背に腹は変えられない!
尚美は思い切って哺乳瓶に口を近づけた。

そして一口飲むと、後は夢中になった。
前足を起用に使って哺乳瓶を支え、ゴクゴクと喉を鳴らしながらミルクを飲んでいく。

空っぽだった胃がほどよく温められたミルクによってどんどん満たされていく。
「そんなに焦って飲まなくても誰も盗んだりはしないよ」

男性がクスクス笑って言うけれど、必死になりすぎて尚美の耳には入ってこない。
ゴクゴクとミルクを飲むたびに小さな耳が連動するようにピクピク震えている。

その姿が愛らしくて男性の表情も緩みっぱなしなのだけれど、尚美はもちろん気が付かない。
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