嘘に恋するシンデレラ

 暴力なんかを理由に第三者が介入するとまずいと思ったのか、星野くんの言う通り表面的に“大人しく”はなった。

 けれど、口ではそうやって凶暴性をちらつかせて脅すから、わたしにはどうしようもなくて関係を継続するしかなかったんだ。

 わたしは確かにそのことを以前から星野くんに相談していた。
 彼の部屋にあった写真なんかは、独自に集めてくれていた証拠。

『ねぇ、もう警察行こう。これ以上こころが苦しむ必要ないよ』

 だけど、そのときのわたしは隼人の報復が怖くて諦めていた。
 こんな事態に発展させた自分が悪い、と思い込むことで。

 ────そのとき、ふと砂利(じゃり)を踏み締める音が聞こえた。

 弾かれたように顔を上げると、隼人が星野くんの(えり)を掴んで引き寄せ、その頬を殴ったところだった。

「ちょっと……!」

 慌てて隼人の腕を掴んで引く。
 星野くんはたたらを踏んだものの大人しいままで、そこから動かなかった。

「おまえ、最低だな」

 わたしの手から抜け出しつつ、隼人は彼に吐き捨てる。

「だからってこころのこと殺す気かよ」

 反撃もせずに黙っていた星野くんだったけれど、その言葉に顔をもたげた。
 は、と嘲るように笑う。

「……きみが言えたこと?」

 それに触発(しょくはつ)された隼人が再び彼の胸ぐらを掴んだ。

「やめて! もうやめて……!」

 慌ててふたりを引き剥がし、泣きそうな気持ちでうつむく。

 隼人は舌打ちをして一旦背を向け、星野くんはため息をつきながら乱れた襟元を正していた。

「でも……何でなの?」

 そう小さく尋ねながら星野くんを見上げる。
 彼はわずかに顔を傾けた。

「最初はともかく、また突き落としたのは」

 それに関しては、考えてみても真っ当な理由が思いつかない。

 彼は「あー」といま思い出したかのように言い、それから肩をすくめて笑った。

「何かばからしくなっちゃってさ」

 言っていることと表情があまりにも合っていない。
 そのちぐはぐさが逆に恐ろしく感じる。

「僕がこんなに尽くしてるのに、きみは僕を疑ってこいつを信じようとしてばっか。振り回されてたのはきみだけじゃないんだよ」

 いつもは穏やかな彼の口調が崩れた。
 その怒りの本気具合をひしひしと感じ、萎縮(いしゅく)してしまう。

「さすがに我慢の限界だった。だからムカついて突き落とした、それだけ。仕方ないよね?」
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