余命1年半。かりそめ花嫁はじめます~初恋の天才外科医に救われて世界一の愛され妻になるまで~
 え……今、なにが起こった? 私が綺麗? 我慢できない? からの……キ、キス!?

 予想だにしない展開に、パニックに陥って挙動不審になってしまう。

 ど、どうしよう、こういう時ってどんなリアクションをすればいいの!?

 初めての経験で内心あたふたしていると、数人の男女がわいわいしゃべりながらこちらに向かってくる。

 気まずい……と思ったのは夏くんも同じだったのか、「そろそろ終わりそうだし、飯食いに行くか」と何事もなかったかのように言うので、目を見られないままこくりと頷いた。

 再び手を取って歩き出し、私は熱が冷めやらない顔を俯かせてついていく。もう転ばないように注意して。

 ……雰囲気に呑まれたとか、魔が差したってやつだろうか。それ以上の理由を望んでも仕方がないのに、心のどこかで期待してしまう自分がいて憎らしい。

 この手をいつまでも離したくない──それは贅沢で叶わない望みだとわかっていても、願わずにはいられなかった。


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