私だけの白昼夢
『まもなく、終点、ゲシュートです。お降りの時は足元にご注意ください。小さなお子様連れの、、、』

列車のアナウンスとともにホームへ降りる。
駅構内は木目調の温かみの感じる雰囲気だが、どこか重厚感がある。これがレトロというんだろう。
人の流れに逆らわないよう少し足早に歩く。そのまま改札口へと続く階段を上る。木でできているからか踏む度にメキメキと音がなる。意外と頑丈なんだろうか。
改札口をおり、外へ出る。
「うわ、すご、、」
目の前に広がる景色に思わず目を奪われる。
何車線にも広がる大きい道路とそれに続く長い坂。周りはカフェや土産や露店など人が多く交流している。古い建物が多く古民家というのだろうか、風情が感じられる。外国人もいるのだろう。通りすがりに外国語が耳に入ってくる。
ポケットから地図を広げる。地図を見る限り目の前の坂を登らないといけないらしい。
大きく深呼吸し、1歩を踏みだす。
故郷の何倍も長い横断歩道を渡り、大きな門をくぐり抜ける。この坂は商店街になっているらしい。この町の名所なのだろうか。意外と急な坂ではないようだ。テンポよく坂を登っていく。
坂を登り始めてすぐに目的地はみつかる。
「薬膳茶屋陽だまり、、、ここだ」
大きいガラス張りのドアの向こうにはゆったりとお客さん達がくつろいでいるのがみえる。奥の方のキッチンにはコトコトと透明な鍋でなにかを煮ている。レモンだろうか、ドアの隙間からは柑橘系のいい匂いがする。
店内を覗くと中は吹き抜けになっており右側に大きな階段がみえるが入口は茶屋ではなく、隣のドアへと繋がっている。寮は隣なのだろうか。
おろおろとしているとドア越しに品の良さそうな年老いた女性と目が合う。あの人が千代さんだろうか。おそるおそるゆっくりとドアを開ける。
目があった女性ががあっと驚いた顔をする。
「もしかして、あなたが雛さん?」


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