君との恋のエトセトラ
昼休みのカフェテリア。
食事の前に木原は凛に頭を下げる。

「凛ちゃん。まずは謝らせてくれ。体調を崩した時にそばにいなくてごめん。本当に悪かった」
「いえ、そんな。木原さんが私に謝ることなんて何も…」
「いや、本当に申し訳なかった。俺は君を必ず幸せにすると約束したのに、肝心な時にそばにいてやれなくて。それに君が無理をしていたのにも気づけなかった。自分が情けなくて仕方ない。凛ちゃん、本当にごめん」
「木原さん。もう顔を上げてください」

木原はゆっくりと顔を上げると、凛を真っ直ぐ見つめた。

「凛ちゃん。俺は今度こそ覚悟を決めて君に誓う。必ず俺がそばで守り、君を幸せにすると。今すぐ俺と一緒に暮らそう。凛ちゃん、俺と結婚して欲しい」

飾らずに真剣にそう告げられ、凛は冷静に考える。

この人と結婚すれば、自分は幸せになれるのだろうか。
いや、それ以前に自分はこの人と結婚したいのか?
プロポーズされて、今嬉しいのか…。

どうしても、そうだとは思えない。

「凛ちゃん。まだ考えがまとまらないのかもしれない。だけど俺はもう君を一人にしたくないんだ。プロポーズの答えはまだ先でもいい。すぐにでも引っ越してきてくれないか?」

凛は心の中で気持ちを固めた。

「木原さん。お気持ちは嬉しいのですが、お受け出来ません。木原さんは私を守ろうとして、私との結婚まで考えてくださっているのだと思いますが、木原さんにはそんな理由で結婚相手を決めて欲しくありません」
「いや、違うよ。俺は本気で凛ちゃんが好きなんだ。だから結婚したいんだよ?」
「でしたら、まずはおつき合いから少しずつ交際を重ねて、というのが自然な流れではないですか?すぐに一緒に暮らす必要はないと思います」
「それは、その…。凛ちゃんが好きだから心配なんだ。それではダメなの?」
「私は心配されたり、守って欲しくて結婚を考えたりはしません。自分の足でしっかりと人生を歩んでいきたいと思っています。それが私の生き方なんです。ですから、今このタイミングで木原さんのお気持ちには応えられません。ごめんなさい」

静かにきっぱりとそう話すと、凛は木原に頭を下げた。
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