君との恋のエトセトラ
「河合さん、お茶をどうぞ」

風呂上がりに縁側から月を眺めている航に、凛は温かいお茶を持っていく。

「風邪引かないでくださいね」
「ありがとう。あまりに夜空が綺麗でね。東京とは別世界だな。心が安らいで、すごく落ち着く。ここに来られて良かったよ」

そう言って凛に微笑む。

「すみません、いきなりこんなところまで来させてしまって…」
「いや、日頃頑張ってるご褒美をもらった気分だよ。最高に贅沢な時間だな」

航はお茶を飲みながらまた月を見上げる。

「静かだね。声を潜めてしゃべりたくなる。この自然の邪魔をしたくなくてね」
「ふふっ。大声を出しても近所迷惑になんてならない田舎なのに?」
「ああ。逆に都会だと、わー!って騒ぎたくなる。なんでだろう?」
「なんとなく分かります。ここにいると自然と対話したくなりますから」
「自然と対話か…。まさにそうだね。色んな感情が湧き起こってくる。自然が心の中に語りかけてくる気がするよ」

二人はしばらく静かに月を眺めた。
ふと、航は凛の横顔に目を向ける。
穏やかな笑みを浮かべて月を見上げる美しい横顔。それは…

月の女神、セレーネの魔法?
いや、凛の清らかさの表れ?

答えは出さず、航はただその美しさに見とれていた。
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