君との恋のエトセトラ
「昨日は大変だったね。お母さんの具合はどう?」
「はい、もう落ち着いています。しばらくお薬を飲んで様子を見ることになりました。皆様にはご心配とご迷惑をおかけしました」
「いや、そんな。凛ちゃんこそお母さんのこと、心配だったでしょ?」
「ええ。でも河合さんがあっという間に飛行機やレンタカーを手配してくださって。本当に助かりました」
「そうなんだ。あいつがいて良かったね」
「本当に。私一人では、うろたえるばかりだったと思います」

コーヒーを飲みながら、木原は顔を曇らせる。

「木原さん?どうかされましたか?」
「…どうしていつもあいつなんだろう」

え?と凛は首をかしげる。
木原の言葉の意味が理解出来なかった。

「どうしてその時、君のそばにあいつがいたんだろう。あいつじゃなくて俺がいたら、俺だって君のそばについていられたのに」

凛は少し考えてから口を開いた。

「そうですよね。河合さんには、いつも保護者代わりのようになって頂いて。河合さんにばかりご迷惑をおかけして、申し訳なく思っています」
「保護者代わり?凛ちゃん、君はもう立派な社会人だよ。学生じゃない。君に必要なのは保護者代わりじゃなく、どんな時もそばで君を支えて守る恋人だよ」
「恋人…?」

凛は意外そうに聞き返す。

「私に必要…ですか?」
「ああ。君の心を支えて、たくさんの愛情で包み込む恋人だ。決して保護責任者じゃなくてね」

そして木原は凛の目を真っ直ぐ見つめた。

「凛ちゃん。家族の幸せばかりを考える凛ちゃんは、もっと自分自身を幸せにしなきゃダメだよ。お母さんや妹さんも、いつまでもそのままだと凛ちゃんのことが心配になる。お二人の為にも、凛ちゃんは幸せにならなきゃ」

ね?と顔を覗き込まれて、凛は小さく頷いた。
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