君との恋のエトセトラ
翌朝。
凛は6時に起きて朝食の準備をする。

(夜は外食でも、朝食は毎日食べてもらえるよね)

そう思い、朝も和食を作ることにした。

豆腐の味噌汁にだし巻き卵、焼き鮭をテーブルに並べたところで、航が入ってきた。

「おはよう…って、え!朝からこんなに作ったの?すごいね」
「おはようございます。良かったら召し上がってください。河合さん、普段は朝食は軽めなんですよね?もし食欲なければ残してくださいね」
「ありがとう。でも今は食べる気満々なんだ」
「ふふっ、それならどうぞ」

二人でゆったりと朝食を味わい、食後にコーヒーを淹れる。

「はー、朝から贅沢な時間だな。今日も一日頑張れそうだよ」
「河合さんは今日も外回りに直行ですか?」
「うん、そのつもり。夜も遅くなるから先に休んでて」
「ありがとうございます。それから、あの…。派遣会社から新しい住所を登録するように言われまして。どうしようかと…」

手にしたスマートフォンに目を落としながら、凛が戸惑いがちに言う。

「ん?ここの住所をお知らせすればいいんじゃないの?」
「でも、今はハウスキーピングとしての試用期間ですよね?クビになったらすぐにまたマンスリーマンションに移るので、住所変更はしない方がいいかなと…」

すると航は凛の手からスマートフォンを取り上げた。

「え?あの…」
「住所変更ってこの項目だよね」

派遣会社の登録画面を見ると、航は素早く住所を入力する。

「はい、出来たよ」
「あ、ありがとうございます。ここを出て行く時はすぐに変更しますので」

凛はかしこまって頭を下げたが、航は涼しい顔で聞き流す。

「さてと。それじゃあ、そろそろ出掛けますか。あ、鍵を渡さないとね」
「ありがとうございます」

渡された合鍵をしっかり受け取ると、凛は先にマンションを出る航を、行ってらっしゃいと見送った。
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