君との恋のエトセトラ
「凛ちゃん、そろそろ帰ったら?タクシーで送るよ」

0時近くになり、皆がグダグダになってきたのを見て、戸田が声をかける。

木原もソファにもたれてうたた寝をしていた。

「抜けるなら今だよ」
「そうですね。じゃあ、お先に失礼させて頂きます」
「うん、行こう」

凛は立ち上がると、皆に挨拶してから戸田と一緒に部屋を出る。

航はなす術もなく二人を見送った。

(どうしよう、大丈夫か?戸田に限ってそんなことはないと思うが…。でも無事に送ってもらえたとしても、住んでる場所が知られるのは…)

考え出すと居ても立ってもいられなくなり、航は近くの数人にだけ「そろそろ帰るわ」と声をかけると、鞄を手に立ち上がる。

急いで店の外に出ると、既に二人の姿はなかった。

タクシーを拾ってすぐにマンションに帰る。
玄関を開けると見慣れた凛のパンプスがあり、航はホッと息をついた。

「お帰りなさい。河合さんも抜けて来たんですか?」

物音に気づいたのか凛がリビングから出てきた。
タッチの差で先に着いたのだろう。
スーツのジャケットを脱ぎ、まとめていた髪も下ろしただけの状態だった。

ゆるくカールした髪がふんわりと肩に広がり、アルコールで頬を赤く染めながらにっこり微笑む凛に、航はドギマギしながら尋ねる。

「あの、大丈夫だったか?その…、戸田は?」
「タクシーに乗る時に別れて、一人で帰ってきました」
「そうか、良かった」
「以前、河合さんに言われたので。警戒心を持たないとダメだって。戸田さんは良い方だからそんな心配はいらないと思いましたが、このマンションの場所を知られるのもいけないかなと」
「うん、そうだな」
「今、お風呂沸かしますね。ゆっくり入ってください」
「いや、君が先に入って。もう遅いし、女の子がこんな時間まで起きてちゃダメだ」

すると凛は、むーっと拗ねた顔をする。

「河合さん、いつも私のことお子様扱いしますよね?」
「だって実際君はまだ若いだろう?都会に出てきたばかりで、誰かが見守っていないといけない。君を預かっている立場として、何かあったらお母さんと妹さんにも申し訳ないよ」
「それって河合さんは私の保護者ってことですか?」
「ああ、そうだよ」

きっぱり頷くと、凛はますます機嫌を悪くする。

「いいもん。お仕事頑張って、いつか河合さんを見返してみせますからね!」

そう言うとプイッと顔をそむけて凛はバスルームに向かった。
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