君との恋のエトセトラ
「その後どう?生活は落ち着いた?」

休憩室のテーブルで向かい合って座り、木原が切り出す。

「はい。マンスリーマンションも、セキュリティがあって以前より安い良いところを借りられましたし、仕送りの金額も半分にさせてもらってます」

それは凛が木原についた嘘だった。
航のマンションからは一刻も早く出なければと思ったが、木原の「結婚を前提に一緒に暮らそう」という申し出を受け入れる気にもなれなかった。

木原には、しばらく一人で考えさせて欲しいと伝え、くれぐれも航にマンスリーマンションに引っ越したことは言わないで欲しいと頼んでいた。

「そう。落ち着いたのなら良かった。でもそろそろ俺とのことも考えて欲しい。凛ちゃんが一人暮らしなのも心配だし、仕送りのお金が減ってしまってお母さんと妹さんのことも気になる」
「そんな…。木原さんは気にしないでください。これは私と家族の話ですから」
「ああ、うん。そうだな、それは建て前だ。本音を言うと、俺が凛ちゃんと暮らしたいんだ。凛ちゃんのそばでずっと凛ちゃんを守っていきたい。健気に頑張る凛ちゃんを、俺がこの手で守りたいんだ。いつも俺のそばで笑顔でいて欲しい。必ず幸せにするから」

木原さん…と、凛は返す言葉に詰まる。

「私、今まで誰かにこんなふうに言われたことなくて。だから、なんてお返事すればいいのか…」
「深く考えなくていいよ。素直に思ってることを言ってみて?」
「あの、正直に言うと困っています。木原さんのお気持ちは嬉しいですが、その…、おつき合いをしたいかと聞かれれば、そうではなくて」
「それって、俺のことが嫌いってこと?」
「いえ!そんなことはありません」
「そっか。なら、気長に返事を待つよ。凛ちゃんが俺とのつき合いを考えられるまで、アタックし続けながらね」

そう言って木原は明るく笑った。
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