君との恋のエトセトラ
「河合さん…」
「目が覚めた?気分は?」
「はい、もうすっかり良くなりました」
「そう、良かった」

そう言うと航は凛の額に手を置く。

「うん。熱も下がったね。お腹空いてるだろ?何か食べられる?」
「いえ、そんな。大丈夫です。河合さん、ずっと看病してくださってたんですか?すみません」
「何言ってるの。これくらいはさせてくれ。今、おかゆ持ってくるからね」

もう一度凛の額に手を置いて顔を覗き込むと、航は微笑んで立ち上がる。

「河合さん、今何時ですか?」
「ん?昼前だよ。えーっと、11時」
「11時?!」

凛は驚いて起き上がる。

「ちょっと、そんなすぐに動いたら…」
「大変!11時だなんて…。仕事に遅れちゃう!」
「え?いやいや、今日は土曜日だよ?だから心配しないで一日ゆっくり…」
「河合さん!私の鞄どこですか?」
「え?ああ、ここに…」
「すみません!」

凛は急いで受け取ると、呆然とする航を尻目にスマートフォンを取り出して、どこかに電話をかけ始めた。

「あ、もしもし妙さん?凛です。すみません、実は体調を崩してしまって、今まで休んでました。これからそちらに向かうので、少し遅刻してしまうんですけど…」

…はっ?!と航は思わず呆気に取られる。

(何だって?一体、何の話を…)

凛は電話の相手と何やら揉めている。

「いえ、もう回復したので大丈夫です。12時半には着くと思うので…、いえ、本当に大丈夫ですから」

航は、もしや?と考えを巡らせた。

(マンスリーマンションで暮らしながら実家への仕送りも変わらずしているとしたら…。もう一つ仕事を?)

そう結論を出すと、いきなり凛の手からスマートフォンを奪った。
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