愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
* * *

 レセプションパーティー当日になり、朝から着付けやヘアメイクに奔走し、慌ただしく過ごしていた。

 義母から贈られたのは、薄い水色の生地に桜の花が描かれた華やかな着物だった。
『二十代の若さと、既婚者の落ち着きを兼ね備えているでしょ』と義母は言っていたが、本当に綺麗な柄で目を奪われた。海外からのお客様にも、きっと興味を持ってもらえるだろう。

「よく似合っているよ」

 支度の整った私を見て、千隼さんが顔を綻ばせる。
 慣れないため少しの苦しさはあるが、彼がこんな表情を見せてくれるだけで着た甲斐があったというもの。

「ありがとう」

 その褒め言葉が、私を勇気づけてくれる。

 時間になり、会場内で彼の隣に立って訪問客を受け入れた。
 最初は緊張で表情が引きつりかけていたが、千隼さんがさりげなく手を握って励ましてくれた。

 訪れた招待客は、一様に華やかな装いをしている。中にはイブニングドレスを纏う女性も見られ、その美しい着こなしに感動してつい見つめてしまった。

 日常とはかけ離れた空間が広がっているが、ここで千隼さんの足を引っ張るわけにはいかないとハッとする。
 背筋を伸ばして、声をかけてくれた招待客に向き合った。

『初めまして。妻の小春と申します。お会いできて光栄です』

 彼に続いてフランス語で挨拶をする。
 それ以外は基本的に千隼さんが会話を勧めているが、勉強の甲斐があって内容が大まかに理解できた。
 自分のしてきた努力は無駄ではなかったと実感できたことで、ずいぶん緊張も解れていく。

「小春、上々だ」

 合間で千隼さんにそっと耳打ちされて、ほっとする。
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