愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
『クラースさん、お久しぶりですね』

 どうやら面識のある人だったようで、近くを通りかかったタイミングで千隼さんから声をかける。
 瞬時に記憶を辿った。
 たしか、ベルギーの有力な議員だったはず。千隼さんとはベルギーに在任中に知り合い、親しくさせてもらっていたという話も思い出した。

『――それで、こちらが私の妻の小春です』

『初めまして。お目にかかれて光栄です』

『ベルギーにいる頃、彼はよくあなたの話を聞かせてくれましたよ。料理がすごくお上手で、かわいらしい人だと。なあ』

 隣に立つ奥様に同意を求めると、彼女はにこやかにうなずいた。

『クラースさん。それを妻の前で言わないでくださいよ』

 眉を下げて訴える千隼さんを、ふたりはおかしそうに笑った。

『こんなに素敵な方なら、堅物の彼も惚気るはずだ』

 お世辞だとわかっていながら頬を熱くした私を見て、クラースさんは『お似合いだ』とご機嫌に笑った。

 クラースさんとのとの会話を終えると、すぐさま別の男性が声をかけてくる。

『ああ、セイナーヴェさん。お久しぶりですね』

 彼もまた、ベルギーの議員だ。
 お互いのパートナーも紹介し合い、話題は千隼さんがベルギーにいた頃に日本大使館で開かれた晩餐会に移る。

『――あのときいただいた日本酒は、最高だったよ』

 〝日本酒〟という単語に反応しつつ、聞き役に徹する。

『ほら、数年前に、ブリュッセル国際コンクールに日本酒部門が新設されただろ?』

 なんのことかと千隼さんに視線を向ければ、国際的なワインコンクールだと教えてくれた。
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