愛を秘めた外交官とのお見合い婚は甘くて熱くて焦れったい
 甘いスイーツに日ごろの疲れも癒されてすっかり浮かれていたけれど、一気に心が冷えていく。

 目の前に座る山科さんの変わらない笑みが、少し怖くなる。
 彼女は、こんな話を善意で私に聞かせているのだろうか。

「私はいつも彼の隣にいたから、逆恨みなんかされちゃって」

「え?」

「ほら。私たちはふたりとも、将来は外交官になりたいって夢が同じだったでしょ? だからいくつも同じ講義を一緒に受けていたし、試験について知り得た情報を交換し合ったりしていたわ。言葉の勉強になるからって、日常会話を外国語でやりとりなんかもして」

 講義の時間もそうでないときも、学生時代のふたりはずっと一緒にいた。さらに就職先まで同じだ。
 なんだか、単なる先輩・後輩の仲だとは思えない。ふたりの関係がいかにも親密そうに聞こえてしまうのは、考え過ぎだろうか。

「私の父って、政治家なのよ。祖父もそうだったわ」

 急に話が変わり、今度はなにかと知らずに身構える。

〝山科〟姓の政治家について、思い出してみた。
 もしかして彼女のお父様は、現職の大臣だったりするのだろうか。たしか同姓の人がいたはずだと、最近テレビで目にした姿を思い起こして顔が強張った。

 私の変化に気づいた山科さんが、正解だとでもいうように笑みを深める。

「父は、そうね。それなりに重要な役職を任されているわ。祖父も、それ以上の職に就いていたかしら」

 彼女は名家のお嬢様だからこそ、ひとつ一つの所作がきれいなのだと納得する。

「きっと千隼先輩は、それもあって私が傍にいるのを許してくれたんでしょうね」

 それはどういう意味だろうか。

「もちろん、大前提は波長が合ったからでしょうけど。でも、ほら。親の存在って、いろいろと影響力があるじゃない?」

 明言を避けた言い回しに気づく。
 つまり山科さんと縁づけば、自分はなにも仄めかさなくても周囲から忖度されるとでも言いたいのだろうか。
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