拝啓、親愛なるお姉様。裏切られた私は王妃になって溺愛されています
 こんな心優しい両親とお姉様を持てた私は、幸せ者だ。
「それにしても、よく寝るネコだ。よほどティーナの腕の中が心地いいとみえる」
 ふいにお父様が私の腕の中で眠りこけるラーラに目を留めて、感心したように呟いた。
 さっきお姉様が言っていた通り、ラーラは一カ月ほど前の嵐の日に侯爵家の門の外に倒れていたのを、私が自室の窓から外を見下ろした時に偶然見つけた。
 もとの毛色も分からないボロボロの有様の子ネコを放っておけず、すぐに拾いにいってラーラと名付けて誠心誠意世話をした。ラーラは見る間に元気になり、ぼそついていた毛も今は艶やかな純白に輝いている。
 ただ、まだ子ネコだからなのか、日がな一日うとうとと寝てばかり。加えて私以外に懐こうとせず、私以外の人に触れられるのを嫌った。
「本当ね。……ふふっ、まるで天使の寝顔ね」
 お姉様がうっとりとこぼし、ラーラに向かって嫋やかな手を伸ばす。その手がラーラに触れる直前──。
『クシャッ!!』
 突然ラーラがクワッと牙を剥き、お姉様を威嚇した。
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