陰キャの橘くん
「なんで館長は、あんな子採用したんだろ。」
昼休憩の時間。ももは、藤堂と一緒に事務所で昼食を食べていた。
橘と倉嶋は館長の吉田に連れられて、ビルの案内がてら上の階のレストランへ行っている。
「橘くんのこと?」
藤堂がコンビニで買ってきたサンドイッチにかぶりついた。
「学生時代、芸術関係のすごい賞獲ったことがあるとか。」
ももは首を傾げた。
「橘…なんて名前、ここ数年見てないけど。」
「だよね。ももは、そこんとこ詳しいもんね。」
うーん、と藤堂がうなる。
「お客様に挨拶すらできないんだよ。この先が思いやられるわ。」
弁当の卵焼きをつつきながら、ももはため息をついた。
「でもさ、頭数としてはさ、いてくれると助かるじゃん。」
確かに。去年の新入社員はすぐに辞めてしまったし、人手不足なのは否定できない。橘のことも、根気強く教育していくしかないのだろう。それはわかっているのだが。
「ねぇねぇ、それよりさ。明日の2人の歓迎会、もも来るでしょ。」
藤堂が、体を寄せてきた。
「うん?」
ももは、卵焼きを口に入れながら答える。
「館長が、青山さんのバーを予約したみたいで。」
卵焼きを咀嚼する口の動きが止まった。
「あぁ…。」
「他の場所にしましょうって言いたかったんだけど、あの店がダメっていう理由を説明できなくて。」
藤堂が申し訳なさそうな顔をする。
「別に…。」
ももは、卵焼きを無理やり飲み込んだ。
「大丈夫だよ。もう半年前のことだし、意識するのも変じゃない?」
そう言って笑う。
「…そっか。それならいいけど。」
藤堂のホッとしたような顔を見て、何だか辛くなる。
ごめんね、朱里。
本当は、全然平気じゃない。
平気じゃないけど、平気なふりをするしかない。でもそんなこと、誰にも言えないじゃない。
ももは、コロコロと転がる弁当箱の中のウインナーに、思い切りフォークを刺した。
昼休憩の時間。ももは、藤堂と一緒に事務所で昼食を食べていた。
橘と倉嶋は館長の吉田に連れられて、ビルの案内がてら上の階のレストランへ行っている。
「橘くんのこと?」
藤堂がコンビニで買ってきたサンドイッチにかぶりついた。
「学生時代、芸術関係のすごい賞獲ったことがあるとか。」
ももは首を傾げた。
「橘…なんて名前、ここ数年見てないけど。」
「だよね。ももは、そこんとこ詳しいもんね。」
うーん、と藤堂がうなる。
「お客様に挨拶すらできないんだよ。この先が思いやられるわ。」
弁当の卵焼きをつつきながら、ももはため息をついた。
「でもさ、頭数としてはさ、いてくれると助かるじゃん。」
確かに。去年の新入社員はすぐに辞めてしまったし、人手不足なのは否定できない。橘のことも、根気強く教育していくしかないのだろう。それはわかっているのだが。
「ねぇねぇ、それよりさ。明日の2人の歓迎会、もも来るでしょ。」
藤堂が、体を寄せてきた。
「うん?」
ももは、卵焼きを口に入れながら答える。
「館長が、青山さんのバーを予約したみたいで。」
卵焼きを咀嚼する口の動きが止まった。
「あぁ…。」
「他の場所にしましょうって言いたかったんだけど、あの店がダメっていう理由を説明できなくて。」
藤堂が申し訳なさそうな顔をする。
「別に…。」
ももは、卵焼きを無理やり飲み込んだ。
「大丈夫だよ。もう半年前のことだし、意識するのも変じゃない?」
そう言って笑う。
「…そっか。それならいいけど。」
藤堂のホッとしたような顔を見て、何だか辛くなる。
ごめんね、朱里。
本当は、全然平気じゃない。
平気じゃないけど、平気なふりをするしかない。でもそんなこと、誰にも言えないじゃない。
ももは、コロコロと転がる弁当箱の中のウインナーに、思い切りフォークを刺した。