孤独な少女は優しさに堕ちていく。
♢♢♢

「あの、今度一緒に水族館、行ってくれませんか?」

家族の命日から1週間経った頃、私は今までの人生で一番緊張しながら言葉を紡いだ。

「…、あの日から怖くて、行けなくて、
だから、その、千景さんとなら行ける気がしたんです。」

居心地が悪くて、言い訳がましい理由を並べる。

「…、いいよ」

少しの間考える素振りを見せたものの、千景さんは私と一緒に水族館へ行ってくれることにしたらしい。

「本当ですか!!」

千景さんに言った理由は嘘ではない。

行くのが怖かったのは本当だ。

でも単純に千景さんと出かけたいと思う。

「でも、もう少し後でもいいかな?今、ちょっと忙しくしてるから」

不思議な言い回しだった。

「全然大丈夫です!!」

「ありがとう」

相変わらず、千景さんは柔らかな笑みを浮かべていた。

嬉しくてスキップし始めそうなほどルンルンで駅に向かっているとスマホが鳴った。

『ごめん。今日、遅刻するから一緒に学校いけない…』

梨奈からだった。

『おっけー、何時ぐらいに来る?』

『3時間目には、間に合うようにいく!』

返信をしてスマホをしまう。

最近、梨奈は欠席や遅刻、早退が増えた。

少し前にも言っていた如月組とかいうヤクザの組長が、今度は組を解散させようとしているらしい。

寂しいけど仕方がない。

それに今日、朝から梨奈に会っていたら絶対に良いことがあったとばれてしまう。

千景さんのことは上手く説明できる気がしないし、梨奈を納得させられる気もしないので伝えていない。

私は、一人で学校へ行った。
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