宿り木カフェ
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「本当に色々とすみませんでした」
松本さんの仕事が一区切りするのを待ち、結局メールを偏してから会ったのは二週間後だった。
前回と同じ小料理屋に直接集合にし、今回は彼が席を押さえていた。
やはり少し彼は遅刻してくると、開口一番、頭を下げて謝罪した。
「あー、とりあえず、座りません?」
立ったまま謝罪している松本さんに苦笑いしかない。
とりあえずビールをし、先付けをもそもそお互い食べながら沈黙が続き、私は耐えきれなくなった。
「あの、面倒なんで率直に色々聞いて良いですか?」
私は、ドンとビールのジョッキを置くと、意を決して目の前の彼を見てそう言った。
つまみを口にしていた松本さんは、ぎょっとした顔をしていたが慌てて飲み込むと、何故かきっちり座り直して私を見たかと思うと、すぐに目をそらした。
「なんで口座教えてってメールしたんですか?」
その質問に私の方を見ると、すごく困惑した顔になる。
「え、それは、お金持って無かったので」
「いや、そこは、「今度その分ご馳走しますから」とかにはならないんですか?!」
彼は目を丸くして私を見た。
あ、考えて見たら、私を誘って当然というのが地で出てしまった。
彼が誘いたく無い場合もあるのに。
「それは・・・・・・別の話では?」
「はい?」
「私は貴女に食事の支払いが出来なかった。
それをきちんと金銭で補填することはわかりますが、食事を奢ることでは補填にならないのでは?」
「・・・・・・」
あぁ、どうしよう、考え方の根本が違うんだ。
これが頭の良い人というものなのだろうか。
私は思わず顔に手を当てた。
「えっ?何か間違えましたか?!」
「あー、いや・・・・・・」
うろたえる松本さんに、私は言葉が返せない。
「あの、私が色々と世間とずれている、というのは理解していますが、どこがずれているのか私自身ではわからないんです。
出来れば、指摘してもらえませんか?」
彼は大まじめに聞いている。
私はそんな彼を見て、ぷっと吹き出した。
まずい、怒ってるかも知れない。
でも松本さんは、怒ってもいなければ、わからないのが嫌だ、という感じに思えた。
私も真面目に答えることにした。
「こういうのに登録しておいて何なのですが、私、それなりに男性に不自由しなかったんです」
「そうでしょうね」
真面目に返されて、私は再度吹き出した。
何故だろう、今回は腹を立つことも無く不思議な気持ちだ。
「それで、今まで食事とかは男性がみんな奢ってくれていたんです。
もちろん仕事や友人とは男性でもきちんと折半で支払う事もあるんですけど、財布を忘れてきた男性は松本さんが初めてで」
「本当にすみません・・・・・」
しゅん、となった彼にやはり何故か笑ってしまう。