宿り木カフェ
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『おめでとう!』
「いや、単にご飯に行っただけよ?」
私はあの一件後、すぐに松本さんと食事に出かけた。
美味しい焼き鳥は味わえたが、少しお洒落してきた服が焼き鳥の臭いまみれになってしまい凹んだけども。
『でもさ、今までの男とは違う感じなんじゃない?』
「全く違うわよ」
『それに聞いてるとさ、彼は結構やる男に思えるね』
「どのあたりが?」
『最初は乗り気じゃなかったのに、そこまで進めたんだ。
よほど君が気に入ったんだろ。
本当にそいつ、ノーベル賞取ったりするかもよ?いつか』
「ノーベル賞って大げさな」
私は苦笑いし、話を続ける。
「これってさ、正しい方向なんだと思う?
知り合ったのネットだよ?
相手はよくわからない研究者で、本当に彼の言葉を信じて良いのかわかんないの。
また今までみたいに、外見目的で終わる可能性だってあるわけでしょ?」
『正しいか正しくないかなんてどうやってわかるわけ?』
「なんというか、本来の苦労せずに逃げなのかなとか、本当の事が私は見えてないのかとか」
『君って思った以上に自分への自信、低いよね』
「私だってそうは思ってなかったわよ。
でもさ、今までなんとなく色々な事が出来てしまっていたのよ。
それが美人だ、という事でかなり下駄を履いていたってのを今頃わかってさ、その下駄が無くなった途端、自分があまりに何も無くて怖いのよ」
『美人だって武器だ。
生きるのに使って何が悪い?』
「だから、それは私が努力して得た物じゃ無いし」
『君はその美人を維持するのに何の努力も本当にしなかったの?
俺はしてたよ?
素人とはいえモデルなんてやってたからジムに通ってたし、お洒落にいられるよう情報にも気をつけた。
あまり馬鹿呼ばわりされるのもシャクだから大学も行ったし。
貴女だって本当なら仕事しなくても生活出来たんじゃないか?
なのに会社に勤めてる。
何も自分はしてないなんて言うのは、あまりに物事を見られていないと思うね。
そういう事を、きちんと自分を分析できる能力も伸ばすべきなんじゃない?』
私はチャラチャラしていると思っていたタクヤさんが、少し鋭い声でそう話すのを驚いて聞いていた。
もちろん、全く努力していなかった訳では無い。
外見維持のため美容に健康に注意した。
社長とかと付き合うことも多かったから、話がわかるようにニュースや経済の知識は最低限入れておいた。
家を上げるから側にいるよう言われたこともある。
そんなの自由が奪われるのと同じだと思い、会社に就職した。
就職活動中、自分の会社に、知り合いの会社にと勧めてくれた人達も居たけどそれも嫌で、自分で選んだ会社に自力で入った。
でも、でも。