姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
 雅貴さん、私はあなたに触れられるのが嫌じゃないと伝わりましたか?

 せめてそれだけは知っていてほしいのに、なんだか空振りに終わったような気がした。

 
 チェックアウト後、区役所に婚姻届を提出し、新居へ向かった。

 今日から私たちが暮らすのは、都内の一等地にあるモダンな外観の超高級レジデンスだ。

 地上四階、地下一階の建物には七戸しかなく、私たちは四階をまるごと所有する。エレベーターも専用で、プライバシーに配慮された設計だ。コンシェルジュによるフロントサービスや三重のオートロックも備わっていて、セキュリティも万全になっている。

 室内は広々とした開放感のある四LDK。内装は細部までこだわり抜かれた上質な素材が使われていて、仕様や設備も最高級だ。家具はプロのインテリアコーディネーターに依頼して、おしゃれで快適な住空間を作ってもらった。庶民の私には分不相応だけれど、いずれ都内随一の大病院を継ぐ雅貴さんには相応しい。

 交際期間ゼロ日で始まった雅貴さんとの新婚生活は、とても穏やかだった。

 言い換えれば、まるで長年連れ添った老夫婦みたいな、なんの刺激もない日々だ。

 二年間勤めていた雑貨の輸入メーカーは、雅貴さんが私が専業主婦になるのを希望したので退職した。もちろん強制されたのではなく、私も納得の上だ。脳神経外科医の彼は勤務時間も長く多忙なので、できるだけそばで支えたいと思った。

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