姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
 結婚式を挙げた日に泊まった部屋も素敵だったけれど、ここはクラシカルな雰囲気で、また趣の異なる豪華さが感じられる。海を見下ろす丘の上に建っていて、景色がとてもよかった。

 ルームサービスで食事をし、非日常的な時間を楽しむ。

 夜が更けるとプライベートバルコニーで雅貴さんと瞬く星を眺めた。

「夏の大三角ですね」

 ベガ、デネブ、アルタイル。空を指さして星座をなぞる。星は詳しくなくて、それしか知らないし、属する星座まではわからない。一等星なのでいくつかの条件が揃えば自宅からでも見られるけれど、比べものにならないほど明るく輝いている。

「雅貴さんはほかに星を知っていますか?」

「低い位置で赤く光っているのはさそり座のアンタレスだ」

「すごい、本当に真っ赤ですね。実際には初めて見たかもしれません」

「アンタレスも一等星だが、都内では建物に隠れたり、街の明かりにかき消されたりするからね」

 夏の大三角と、アンタレスが属するさそり座の間にあるのがへびつかい座だそうだ。さすが雅貴さん、いろんな知識が豊富だ。

 心地のよい彼の声を聞いていたら、突然海のほうから打ち上げ花火が上がった。

「えっ? 花火?」

 豪快な爆発音が響き渡り、色とりどりの花火が夜空を埋め尽くす。海面では半円状に水中花火も上がった。

 階下のバルコニーから歓声や拍手が聞こえる。

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