姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
「すごくきれい! 雅貴さん、今日は花火大会の日じゃありませんよね?」

 彼はなにか知っているだろうか。

「ああ。特別に許可を得て、プライベート花火をオーダーしたんだ」

 彼の返答に、私は目を丸くした。

 それは、この打ち上げ花火は雅貴さんのサプライズということ?

 あまりにも大がかりすぎて、驚きを隠しきれない。

「私のために……?」

「少しは元気になれた?」

 柔らかく微笑まれ、昨日のやりとりが脳裏をよぎる。

 雅貴さんに友だちとなにかあったのかと尋ねられ、あのとき彼は理由を深く追及してこなかったけれど、私が鬱々としていたのをずっと気にかけてくれていたのだろう。

 ひまわりと花火。地と空に咲くふたつの花で励ましてくれた彼の優しさに、胸がきゅっと締めつけられた。こんなにも私に思いやってくれる人は、彼のほかにいない。

 雅貴さんは昔から私に元気がないとすぐに察してくれる。十年前に彼を好きになったきっかけもそれだった。

 彼への想いが溢れて、どうにかなってしまいそうになる。

「……はい。ありがとうございます。元気チャージできました!」

「よかった」

 ただただ笑みをたたえる彼に、大切にしてもらえていると実感し、この上ない幸せを感じた。

 ……誰にどう思われたっていい。彼がそばにいてくれるなら。

 そう心の底から思った。

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