姉の許婚に嫁入りします~エリート脳外科医は身代わり妻に最愛を注ぐ~
深まる絆
「じゃあ行ってくる。帰宅は明日の夜になるからね」

「はい。行ってらっしゃいませ」

 週に一回、当直勤務がある雅貴さんを送り出す。

 当直の日は日勤を終えたあと、そのまま病院に泊まり込み、さらに当直明けに再び日勤が続く。拘束時間が三十時間を超えるハードワークだ。

 脳神経外科医として激務をこなしている雅貴さんは常に心身ともに安定していて、私には穏やかな姿しか見せない。

 医師の家系で育った彼は、流れで外科医になったと思われているのかもしれない。けれど彼は、これほどやりがいのある仕事はないと語っていた。本質的な人間性や性格もこの仕事に向いているのだ。

 久宝総合病院は専門性の高い希少疾患の診療実績も豊富で、テレビ番組で特集を組まれたこともある。欲目抜きに、雅貴さんはいずれそのトップに立つのにふさわしい。本当に自慢の旦那さまだ。

 ひまわり畑の一泊旅行後、実結と瑞季、わかばに、スマートフォンからひまわりの画像を送った。

【雅貴さんと行ってきたよ】とメッセージも添えたら、すぐに【いいなー! ラブラブだー!】と屈託のない返信が次々届いた。どうやら気にしていたのは私だけだったみたいだ。それからもいつも通りのたわいないやりとりが続いているのでほっとした。

 瑠奈さんには強い言葉で罵られたけれど、私はなにも悪いことはしていないし、世間に顔向けできないことをしたわけじゃないのだから堂々としていよう。そう心に決めた。

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