意地悪で優しいあなたの溺愛
♢♢♢

「あ、そうだ!私と入れ替わらない?」

勉強会当日の朝、花梨は良からぬ事を思いついたようだ。

「右京くんと左京くんが私たちのこと見分けられるのか気になるでしょ?」

…気になる。特に左京くんが。

「ね?やろう!」

「…うん」

花梨と入れ替わるのは小学生のころによくやっていたから、慣れたものだ。

花梨が今日着る予定だった服に腕を通す。

念には念をいれて、二重の内側のほくろを隠し、普段より少しだけ濃いメイクをする。

花梨も私が着る予定だった服を着て、普段より軽いメイクをした。

私と花梨は、イメージカラーを作ることで見分けやすくしている。

私が青系で、花梨が赤系だ。

今回は逆にするために、私が淡いピンクのリボンで髪を結び、花梨が水色のリボンで髪を結んだ。

ふたりで向かい合って、おかしな所がないか確認する。

「んー、ホントは胡桃より私のほうが身長高いんだよね…」

こうやって見ると、胡桃になっている花梨のほうが背が高い。

ごくわずかな差だけど、気がつかれる原因になるかもしれない。

「じゃあ、私が厚底の靴履くよ」

「あ、それいいね。じゃあ、そうしよ」

互いの性格はよく知っているし、そもそもそっくりな双子なので、全力で相手になりきれば両親ですら騙せたこともある。

だから、左京くんと右京くんたちも見分けることは出来ないだろうと高をくくっていた。
< 28 / 61 >

この作品をシェア

pagetop