意地悪で優しいあなたの溺愛
「あのさ、ちょっとだけ別行動しない?」

ベビーカステラの袋を手に持ったままの花梨が、そう提案した。

「俺と花梨で行きたいところあるんだ」

この神社をカップルで参るとずっと仲良く居られる、というのはかなり有名なジンクスだ。

きっと、そこに行きたいのだろう。

「…いいよ」

それに、この別行動はある意味、私のためでもある。

「左京くんもいい?」

「別に。好きにして」

左京くんにも許可を取った花梨がしっかりとした目でこちらを見た。

花梨の目は、間違いなく“がんばれ”と言っている。

心の中で花梨に返事をした。

「じゃあ、私達が行きたいところあっちだから。終わったら神社の笹の葉の前に集合ね」

そう言って、花梨と右京くんは人混みに紛れていった。

「さ、左京くんっ、ちょっとだけ、いいかな?」

「…別に、いいけど」

左京くんは少し驚いたような面持ちだ。

どちらともなく歩き出し、お祭りの雑踏から離れた場所に移動した。

「左京くん、」

あんなに怖かったのに、いざその時になってみると驚くぐらい心が凪いでいる。

振られるとわかっていながら告白する私はバカだ。

さようなら。

私の恋心。

短い間だったけどすごく楽しかった。

私はここで自分の想いに区切りをつけなくてはいけない。
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