意地悪で優しいあなたの溺愛
私を包む温もりは、どこか見に覚えがある気がする。

「…左京くん、私達どこかで会ったことある?」

「やっと思い出した?」

左京くんはずっと前から気がついていた様子だ。

「……」

「小学生のとき」

全然思い出せない私に左京くんがヒントをくれた。

小学生の頃に茶髪で目も茶色かった男の子なんていただろうか。

「あっ!さーくん!」

「ふっ、懐かしい」

小学生だった私と花梨は同じく小学生だった左京くんのことを“さーくん”と呼んでいた。

「そう。さーくん」

どうやら正解のようだ。

さーくんはその頃は、私より背が小さくてどちらかと言えばかわいらしい感じの男の子だった。

こんなに変わると誰が予想できただろうか。

「全然ちがう…」

……なんだろう。

はっきりとしない私の勘が違和感を訴えている。

でも、もともと勘が鋭いわけじゃないから、特に心配する必要はないだろう。

「胡桃」

左京くんが私の顎に触れて、顔を上向けさせた。

ゆっくりと近づいてくる左京くんの顔。

そうしろと言われたわけじゃない。

私は無意識に瞳を閉じた。

唇に感じる熱と柔らかな感触。

触れたのが左京くんの唇だと気づくのに時間はいらなかった。

生まれて初めてのキスは、どんな砂糖よりも甘かった。
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