意地悪で優しいあなたの溺愛
美緒奈ちゃんが勧めてくれたカフェは、白が基調のおしゃれなカフェだった。

「すごーい。かわいい」

可愛らしいウサギのオブジェが飾ってある。

「ふふーん、ここ穴場なんだよー、そんなにお客さんいないし、価格もお手頃だしね!」

私がカフェの内装に夢中になっていたのは最初だけだった。

一番端の2人で向き合って座る席に、明るい茶髪を見つけてしまったからだ。

後ろ姿しか見えないけど、間違いなく左京くんだ。

左京くんの向かいには、ボブヘアーで小柄な、私と同じくらいの年か少し下くらいの女の子が座っている。

「ぁ、」

左京くんが椅子から腰を浮かせて、ボブヘアーの女の子に向かって顔を近づけた。

「っ!…美緒奈ちゃん、ごめん、帰ろう」

もうこれ以上見ていられない。

あれは、間違いなく“キス”だ。

彼女の私ですら1度しかしたことがないというのに。

いや、もしかしたら左京くんは私と遊びで付き合っているのかもしれない。

こんなに好きなのは私だけなのかもしれない。

「左京くん、だったよね?女の子と…一緒に…」

「きっと、勘違いだって、ね?」

美緒奈ちゃんは必死に慰めてくれるけど、決定的な瞬間を見てしまったから、あまり慰めにならない。

「私が、彼女なのにっ、…左京くん好きな人いたんだね、っ、別れた方がいいのかな」

別れたくない。

でも、それ以上に左京くんの足枷になりたくない。

「くるみんが彼女だよ。悪いのはくるみんじゃない。あの浮気男だから」

「左京くんは悪くないよ。私のことを嫌いになっただけだもん」

美緒奈ちゃんの呆れた声が聞こえた。

「いやいや、悪いのは100%あいつでしょ」

わかってる、私だってわかってる。

でも左京くんに対して怒りが湧いてこない。

こんなに左京くんの事が好きな私はきっとおかしい。
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