意地悪で優しいあなたの溺愛

デート

ついに迎えた左京くんとのデートの日。

左京くんの提案で、少し遠くのショッピングモールに行くことになった。

楽しみなはずのデートもカフェでの一件があったせいで、憂鬱だ。

左京くんに詳しく聞いてみるしかない。

そうして別れることになったとしても。

気分を上げるために、今日は夏らしいひまわり色のワンピースを着た。

ちなみに靴は水色のサンダルだ。

重い脚に鞭を打って待ち合わせの駅に向かう。

のろのろ歩いたので、待ち合わせの時間に少し遅れてしまった。

待ってくれているであろう左京くんの姿が見える。

「左京くん!」

あんなことがあったのに、私の心は左京くんの姿を見るだけで弾みだす。

小走りになって、左京くんのもとに近寄ろうとする。

「遅れてごめ……」

左京くんはカフェでみたボブヘアーの女の子と並んで立っていた。

元々、よく笑うタイプではない左京くんの口もとが柔らかく緩んでいる。

「っ!」

一瞬は立ち止まった私だけど、次の瞬間には走り出していた。

「っ、やだっ!左京くんをとらないで!左京くんは私の彼氏なのっ!」

必死だった。

左京くんの腕を掴んで引っ張りながら叫んだ。

理性なんてどこかに飛んでいってしまっている。

「胡桃?ちょ、」

左京くんは取り乱す私を見て戸惑っている様子だ。

「左京くんはもう私のこと嫌い?あの子の方が好き?」

「え、?あの子って、こいつのこと?」

左京くんが隣に立つ女の子を指さした。

「そう、」

私には見せないような気安さを左京くんとボブヘアーの女の子の間に感じた。
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