意地悪で優しいあなたの溺愛
「私?私はいもうとだよ?」

ボブヘアーの女の子が口を開いた。

「えっ……でもっ!左京くん前、右京くん以外兄弟居ないって…」

「こいつ義理の妹だから」

義理?

血は繋がっていないってこと?

たしかに左京くんは“血の繋がった”兄弟はいないと言っていたかも知れない。

「初めまして。加瀬はのんです。あ、今中1です」

七夕祭りで感じた違和感はこれかもしれない。

小学生の頃の左京くんは“水無瀬”なんて長い苗字じゃなくて“加瀬”だったような気がする。

「でも…なんで、」

血は繋がっていないのなら、何があって兄妹になったのだろう。

「俺が小学校卒業するまで養子にだされてたから」

「…」

養子と言うことは、左京くんは今の親に育てられていないということだろうか。

「俺を生んだ女が俺の目と髪を嫌がったらしい。んで、その女が病気で死んだから、俺は小学校卒業と同時に強制的に戻された」

養子縁組って、子供を取り戻せるものなのだろうか。

不可能ではないだろうけどかなり難しいはずた。

「水無瀬家が財閥だから。権力行使ってとこかな」

「ぇ、」

左京くんがふっと笑った。

小さく微笑む左京くんがすごく大人びていて、そこに左京くんが抱えてきた苦しみを見てしまって、涙が溢れ出す。

「なんで胡桃が泣いてんだよ」

「だって、だって、っ」

想いが次々と溢れてきて言葉にならない。

「…お兄ちゃん、私帰るね」

左京くんの妹は空気を呼んだのか、この場を去った。
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