憧れの副操縦士は、許嫁でした~社長の隠し子CAは、パイロットにすべてを捧げられる~
「随分、余裕だな……」
「がっつきすぎなのよ」
「仕方ないだろう。ずっとこの日を、待ち望んでいた。煽った責任は、取ってもらうぞ」
「……っ!?」

 責めるような視線を向ければ、熱を帯びた瞳に触発されるように彼が私の身体に指を這わせる。

 煽ったつもりなど、なかったのに。
 墓穴を掘ったと気づいた時には、もう遅い。

 まるでピアノを奏でる演奏者のように。
 優しい手つきで敏感な場所を撫でられると、自分でも信じられないくらいに身体が反応を示す。

「航晴……っ」

 全身が熱を帯びて、何も考えられなくなる。
 それは彼も同じようで、私たちは互いを貪り食らうように激しい口づけを交わした。

「心配はいらない。最初で最後のつもりで、愛し抜くと誓おう」

 今更、この行為をやめてくれと懇願するつもりはなかったけれど。

 最初で最後と宣言されてしまうと、それは嫌だと全身が叫ぶ。
 大好きな人だからこそ、何度だって愛し合いたい。
 そう思うのは、悪いことではないでしょう?

「一度きりなんて、言わないで……っ!」

 全身を余すことなく堪能した彼は、満足そうに微笑む。
 余裕のなくなった私の口から引き出された本音を聞き逃すほど、航晴は優しくない。

「ああ。もちろん。君が望む限り、何度だって……」

 甘い熱に浮かされ、溶け合う感覚。
 二人が一つになると、この上ない喜びに支配される。

「千晴。愛している」

 彼からたくさんの愛を受け取った私は、一生忘れられない夜になるだろうと確信を得ながら幸福感に身を委ね――。

 そうして私たちは、夫婦となって初めての夜を終えた……。
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