プルメリアと偽物花婿
**

 翌日の昼、食事会は和やかに始まった。
 お盆の集まりと言っても、私の家族と姉一家が集まるだけのものだ。和泉も笑顔でビールを受け取っている。

 ――食事会の少し前に我が家を訪れた和泉は両親に丁寧に挨拶をしてくれた。
 無口なお父さんは特に大きな反応はなかったけど、ミーハーなところがあるお母さんは「え、アイドルのミュウくん!?」と騒いでいた。和泉がよく似ていると言われているアイドルの名前をそれで思い出した。そうそう、ミュウくん。

 三歳と一歳の甥っ子姪っ子が場の中心となって盛り上げてくれるから、特別気を遣って会話もしなくていい。
 だけど和泉は隣に座っているおばあちゃんにもよく話しかけてくれた。おばあちゃんは和泉に何度でも同じ質問をするけど、和泉は嫌な顔ひとつせずに優しく返してくれていた。和泉のそういうところが好きだな……胸に優しい明かりが灯る感覚がする。

「凪紗さん、ハワイの写真て見せました?」
「まだ見せてないよ」
「あ、私も見たい!」

 お姉ちゃんが身を乗り出すと、和泉は自慢げにタブレットを取り出すとおばあちゃんの前においてスライドしていく。

「え、本当にアイドルやってた?」
「やってませんよ」
「それにしてはポーズが決まりすぎている……」
 
 家族みんなが楽しそうにタブレットを見つめてくれて、何も心配する必要なんてなかったのだと思う。こんなに優しい和泉のことを、私の家族が受け入れないはずはなかった。

「本当に凪紗が花嫁さんになったんだねえ」

 おばあちゃんは目尻に涙を浮かべながらタブレットを見つめる。
 おばあちゃんの喜ぶ顔はすぐに想像できたけど、こうして目の前で見ると嬉しい。いつかは私のことを忘れてしまうかもしれない。私という個体を覚えていても、記憶は遡ってゆき、今の私のことを覚えていられなくなってしまう。

「地元でも結婚式をしたいと思ってるんです」
< 109 / 136 >

この作品をシェア

pagetop