プルメリアと偽物花婿

 和泉はあの日リムジンの中で言ってくれたことを改めて宣言する。

「海外のロケーションって最高じゃないですか。だから写真撮影をしたくて。それならせっかくだし、と海外挙式をしてきたんです。でもやっぱり大切な人の前でもお披露目したいし、誓いたいとは思っていたんです。写真じゃなくて、実際に見てくださいね。本当にお綺麗だったんですよ、凪紗さん」

 和泉の言葉に、心の柔らかい部分がじんと熱くなる。それが喉を通り抜けて、涙腺まで刺激してくる。
 
 和泉は私の大切なものを大切にしてくれる人だ。

 ……本当は海外挙式に家族を招待出来たらよかった。だけど、痴呆症のおばあちゃんをハワイに連れていくことは現実的ではない。いつもと異なる環境に驚いてしまうから。そして家族がおばあちゃんを置いて、お姉ちゃんが子供を連れて、一週間程海外に行くのは難しかった。
 
 だから、写真だけでも見せることができればいいと思っていたけれど。
 写真を見てこれだけ嬉しそうにするおばあちゃんを見たら、その場で見てほしかったという気持ちが湧いてしまったのだ。
 その後悔を、和泉は一瞬で優しい未来の約束に変えてくれる。

「ありがとうね」

 おばあちゃんが嬉しそうに言った。おばあちゃんは和泉の言葉がよほど嬉しかったのか「結婚式はいつするの?」と何度も聞いていた。和泉はそのたびに「近いうちにしますよ」と答えてくれた。
 
「和泉くんが良い子で嬉しいわ……若いのにしっかりしてるのねえ」

 お母さんが浮かれて言うと、和泉は少しだけ顔を曇らせた。

「結婚するにあたって、一つだけ僕の家族についてお伝えしたいことがあるんです」

 和泉がそう言うと、さすがに両親もお姉ちゃんも緊張した面持ちに変わる。

「僕の両親は離婚していて、母に引き取られたので和泉になったのですが……僕は元々山岡と言います」
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