プルメリアと偽物花婿
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 リハーサルメイクと最終打ち合わせは大きな問題もなく終わった。
 新郎を変更したいと言った時に、コーディネーターさんはぎょっとしていたけど。詳しく訊ねてはいけないと思ったのか、一応新婦が本物だからか、支払いは済ませているからか、深く追及されることはなかった。
 問題は和泉のタキシードのサイズくらいで、現地にある予備のタキシードで事なき事を得た。美形が着ると、どんなタキシードでも様になるらしい。

 私のフィッティングとリハーサルメイクもすぐに終わった。和泉は明日の楽しみにする!と決して見ようとしなかったけど。

「夕飯、何か希望はありますか?」

 ウエディングサロンから出て、和泉は私に聞いた。外に出てみると完全に夜のハワイに変わっていた。ライトアップされていて、昼の陽気さとは異なりムードがある。パフォーマーや大道芸人もいるし、人通りが多く賑わっていてお祭りの夜みたいな気持ちになる。サロンはホテルから五分ほどの場所にあるが、すぐ帰るのはもったいない。

「一日目だしTHEハワイ!的なもの食べたいかも」
「いいですね。それならあそこがいいかな」

 思いついたように和泉は言うと、さっと私の手を取った。あまりにも自然な動作だったで、突然の熱に一瞬固まる。……白状すると、男性との触れ合いにはあまり、かなり……慣れていない。山田さんは、なんというか本当にお見合い結婚のような相手で、お互いにいちゃつくような関係ではなかった。――そんなだから婚約破棄されたんだろうけど!

「嫌でしたか?」

 和泉は気遣う声を出した。

「ううん。ちょっとびっくりしただけ」
「なら良かったです。積極的にはいかせてもらうので嫌だったらすぐに教えてください」
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