プルメリアと偽物花婿
 まるで歯医者さんみたいな言い方をして和泉が笑った。こうして全部感情を伝えてくれると嫌な気がしないから不思議だ。私は和泉に手を引かれたまま進むことにした。

 目的のお店にはすぐに到着した。
 案内されたテラス席は、メインストリートを見下ろすことができて、賑やかな夜の風が身体を包む。
 早速メニューを開くと、アンガスリブステーキやアサイーボウルといったこれぞハワイといったメニューが並んでいた。
 
「そうそう! こういうところが良かったの! 全部おいしそうで迷――」

 嬉しくてはしゃいだ声が出てしまった。気恥ずかしくなって言葉を切ると、和泉がニコニコとこちらを見ているからますます恥ずかしい気持ちになる。

「和泉はこのお店知ってたの?」
「前回来たときに雰囲気もよくて、おいしかったので」
「前も来たのに、同じお店で良かったの?」
「はい。先輩に確実に美味しいもの食べてほしいじゃないですか」

 恥ずかしげもなくそんなことを言うから、こちらの方が照れる。

「……それで和泉のおすすめは? どれも気になるから困ってる」

 照れを隠してメニューに目を戻す。日本語のメニューだから、オーダーに困ることはないけど、どれも魅力的なのは大変困る。
 
「いくつか頼んでシェアしましょう。がっつり食べたい気分ですか? それともお酒飲みますか?」
「飲みたい気分かも」
「ですよね!」

 テラス席の風は心地よくて、気持ちも開放的になっている。美味しいものを食べながらのんびり飲むのは、旅行の醍醐味だ……!
 
 まずは背の高いグラスに注がれたビールが出てきて、私たちは軽く乾杯する。日本でいつも飲んでいるものよりもあっさりしていて飲みやすい。
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