愛の街〜内緒で双子を生んだのに、孤高の副社長に捕まりました〜
きゃっきゃっと声をあげるふたりと一緒にメリーゴーランドへ歩いていく。
 
その背中を見つめて、有紗は複雑な気持ちになっていた。
 
マッシュポテトを食べさせる決心がついたのは彼がそばにいたからだ。

些細なことかもしれないが、自分が彼を双子の父親として信頼できている証だった。
 
きっと普通の夫婦はこうやって子供たちのことについて相談し合い、責任や不安を分け合いながら子育てするのだろう。
 
彼も自分と同じくらい子供たちを大切に思ってくれている。有紗はこの四日でそれを実感した。
 
それは有紗にとっても、子供たちにとってもいいことに違いない。
 
……でも。
 
自分と彼との関係に名前がないのが不安だった。
 
まるで家族のように、夫婦のように子供たちを大切に想い慈しむ。けれどふたりは愛し合っているわけではない。
 
それが、将来どんな影を落とすのか、わからなくて不安だった。
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