愛の街〜内緒で双子を生んだのに、孤高の副社長に捕まりました〜
有紗が彼に恋に落ちたように、彼も有紗に恋に落ちた。
 
立場も過去も関係ない。

ただの人と人として、ふたりは惹かれ合い、愛し合っている。そしてかけがえのないふたつの命を育んでいる……。

「だけど次からは家にするよ。これ以上やると君をこの部屋から出してあげられなくなりそうだ」
 
冗談を言って、彼は有紗を解放した。

「家で癒してもらうことにするよ」
 
有紗は火照る頬を持て余したまま頭を下げる。

「し、失礼します」

「ん、おつかれ」
 
そして部屋を出て頬に手をあてながら廊下を行く。

ちょうど秘書課から詩織が出てきたところだった。有紗を見て口を開いた。

「副社長、部屋におられますよね?」

「はい、……なにかご用ですか?」
 
詮索するつもりはないけれど、立場上知っておいた方がいいかもしれない。

そう思い尋ねただけだったが、彼女は不快そうに眉を寄せた。

「あなたには関係ないことよ」
 
そう言って、顔を背ける。

でも行きかけて立ち止まる。振り向き首を傾げて呟いた。
「……コレート?」

「え?」

「いえ、なにも」
 
またくるりとこちらへ背を向けて、副社長室の方へ歩いていった。
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