愛の街〜内緒で双子を生んだのに、孤高の副社長に捕まりました〜
浴衣は子供を抱くには少し不向きだ。それでも有紗が着ることにしたのは、ほかでもない龍之介に頼まれたからだ。
今日一日は息子たちのことはすべてやるから、と。
はじめ、有紗は躊躇した。
それは浴衣が子供たちと一緒に行動するのに、不向きだというでなく。
今までの人生で、誰かのために着飾ることなどほとんどなかったからだ。
恋愛も結婚もしないと決めていた自分には、こんなこと、一生ないだろうと思っていたのに、思いがけずお願いされて戸惑ったのだ。
とりあえず、龍之介が予約してくれた美容室で言われるままに着付けられてメイクを施されたはいいけれど、これでよかったのかどうなのか……。
ちらりと隣に目をやると、龍之介と視線が合う。有紗の気持ちを読んだように彼は口を開いた。
「綺麗だよ、想像以上だ」
真っ直ぐに有紗を褒めるその言葉に、有紗は耳まで真っ赤になり慌てて周りを見回した。
ここは花火大会の会場なのだ。人でごった返している。
誰かに聞かれたら……。
一方で龍之介は平然としている。
「誰も聞いてないよ」
「でも……」
「べつに誰かに聞かれたとしてもいいだろう。本当のことなんだから。だけどそんな君と手を繋げないのが、少しだけ残念だ」
そんなことまで言う彼に、有紗は「もう」と言って口を閉じる。
こんなところで、と思うけれど、大好きな人からの言葉は素直に嬉しかった。
再会してから、家族としてのお出かけはもう何度目かになる。
それそろ慣れてもいい頃だ。
でも今日はなんだか振り出しに戻ったような気分だった。
今日一日は息子たちのことはすべてやるから、と。
はじめ、有紗は躊躇した。
それは浴衣が子供たちと一緒に行動するのに、不向きだというでなく。
今までの人生で、誰かのために着飾ることなどほとんどなかったからだ。
恋愛も結婚もしないと決めていた自分には、こんなこと、一生ないだろうと思っていたのに、思いがけずお願いされて戸惑ったのだ。
とりあえず、龍之介が予約してくれた美容室で言われるままに着付けられてメイクを施されたはいいけれど、これでよかったのかどうなのか……。
ちらりと隣に目をやると、龍之介と視線が合う。有紗の気持ちを読んだように彼は口を開いた。
「綺麗だよ、想像以上だ」
真っ直ぐに有紗を褒めるその言葉に、有紗は耳まで真っ赤になり慌てて周りを見回した。
ここは花火大会の会場なのだ。人でごった返している。
誰かに聞かれたら……。
一方で龍之介は平然としている。
「誰も聞いてないよ」
「でも……」
「べつに誰かに聞かれたとしてもいいだろう。本当のことなんだから。だけどそんな君と手を繋げないのが、少しだけ残念だ」
そんなことまで言う彼に、有紗は「もう」と言って口を閉じる。
こんなところで、と思うけれど、大好きな人からの言葉は素直に嬉しかった。
再会してから、家族としてのお出かけはもう何度目かになる。
それそろ慣れてもいい頃だ。
でも今日はなんだか振り出しに戻ったような気分だった。