ブラッドドールとヴァンパイア
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 大きな浴場に白百合と服を脱がされた少女がいた。
 周りは泡で満たされており、湯気で視界が曇っている。
 少女は白百合にされるがままになっており、頭を洗ってもらっていた。

(ひどい傷だこと……)

 白百合は少女身体のあちこちに刻まれた傷を見ていた。
 まだ六つにもなっていないであろうに、少女が複数回の暴行を受けたことは一目で分かった。
 それほどに、ひどい傷だったのだ。

(あるじ様が吸血を躊躇うのも、無理はないわ。こんなに傷だらけなのに、さらに傷を増やすようなこと、あるじ様ができるわけない)

 圭は他のヴァンパイアと違って、温かな優しい心を持ったあるじだと白百合は思っている。そしてそれ以上に、この少女には優しく接しようとしている。

(それもそのはずよね。だって、あるじ様はーー)
「しらゆりさま」
「っ……どうかしたの?」

 そこで白百合の思考は少女に移った。
 少女は白百合に尋ねた。

「ごしゅじんさまは、わたしをぶらっどどーるとしてかったのではないのですか?」
「……どうして?」
「ごしゅじんさまからは、きゅうけつしたい、などといったかんじょうがいっさいつたわってこないのです。いままでのわたしのごしゅじんさまはみな、ほぼすべてのじかんをきゅうけつにあてていました。ですが、いまのごしゅじんさまはこうしてわたしのためにじかんをあたえてくださいます。それがわたしにはよくわからないのです」
(……その問いにはわたくしでは答えられないわ)

 白百合だって、圭の全てを知っているわけではない。
 少女よりもずっと長く圭と時を共にした、ただ、それだけなのだから。
 だが、一つ言えるとしたらーー

「……あるじ様は、あなたを吸血以外で傷つけたりなど絶対にしないわ」
「なぜ、いいきれるのですか?」
「わたくしがずっと、側であるじ様を見てきたからよ」

 白百合はそう言うと、少女に温かいお湯を頭から浴びせた。泡が床に溜まり、お湯と一緒に排水溝へと流れて行った。

「さ、体を拭き終わったら新しい服に着替えるわよ」

 白百合は少女にタオルを渡す。
 少女は大体の水分を拭き取ると、白百合の後をついていった。
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