断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
下手(したで)に出てればいい気になりやがってぇえ!」
「いたっちょっとやめなさいっ」

 髪の毛をわしづかまれて、乱暴に振り回された。カッときて、ゆいなの顔面に伸びたネイルを食い込ませる。そのまま勢いよくひっかいた。

「きゃあ、あたしの大事な顔になにすんのよ!」

(やばい……!)

 段を踏み外したのを足裏が感じた。驚きで固まるゆいなの顔が、みるみるうちに遠ざかっていく。

(あ、これはダメだ)

 この落ち方は頭直撃だ。変に助かって生涯寝たきりになるよりはマシかもしれない。
 妙に冷静に観察している自分がいた。

(ああ、未希が何か叫んでる)

 幼馴染が視界に入り、わたしはふっと笑顔になった。何よ、いつも塩対応なくせに、ちゃんとわたしのこと心配してるじゃん。

 ――超エリート校で殺人事件、下級生とのトラブルで社長令嬢が転落死!

 明日にはそんな見出しでネットニュースに載るのかもしれない。しかもゆいなの実名がSNSでさらされたりして。

(はは、ざまぁ……)

 それをこの目で確かめられないのが、ちょっとだけくやしい気がした。

 そんなことを思いながら、わたしこと森華子の生涯は静かに幕を閉じたのだった。


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