断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

第29話 山田の素顔

 鼻息マックスの山田に飛びかかられようとしたとき、ウォンウォンっと犬の吠え声がした。
 遠くからモップのようなでっかい犬が、こちら目がけて走って来てる。
 あの犬は確か……。

「ビスキュイ!」

 なんていいところに来てくれたんだ!
 このモップ犬は前に来たとき会ったことがある犬。お城で飼われてて、コモンドールとかいう犬種だったはず。

 なんとか山田の手から逃れて、そのビスキュイに駆け寄った。
 やばっ、勢いとは言えみんなの前で王子を振り切っちゃったよ。
 ここはもう感動の再会を演出してごまかすしかないな。子供のころに一度しか会ったことのない犬だけれども。

「久しぶりね、ビスキュイ! 会いたかったわ、元気にしていた!?」
「わふんっ」

 飛びついて来るビスキュイを両腕を広げてキャッチする。勢いで押し倒されて、そのままベロベロと顔を舐めまわされた。
 おお、ビスキュイ、君もノリがいいな。
 今日で二度目ましてなのに、本当に感動の再会みたいだ。

 髪もドレスも草まみれになったけど、おかげで無邪気な令嬢って感じに受け止められたみたい。
 これで王子をソデにした不敬行為を、周りから(とが)められることもなさそうだ。こんなことで断罪とかなったら、ホント泣くに泣けないからね。

「ハナコ、大丈夫か?」
「あ……シュン様、申し訳ございません。わたくし子供のようにはしゃいでしまって……」

 我に返った感じで、恥ずかしげに頬を染めてみた。
 わたしってば、もしかして大女優になれるんじゃ。

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